問に答ふ


『みづゑ』第三 P.17
明治38年9月3日

 問一、調和と結合との差違。
 二、相補充して面となるべき色。
 三、樹木の裏面迄も畫くといふは如何なる事なりや。
 四、山の寫生をなす時、山頂高くして畫面に入り難き噂は形を變へ低くして可なるや。尚景色畫には空なきものにてもよきや。
 石見後藤百次
 答一、甲色と乙色との結合はよき(若くは惡しき)調和となると申やうに、結合とは原因で調和は結果とてもいふ事が出來ませう。塲合によつては結合を拔いて、甲色と乙色とはよき調和であると申ても意味は通じます。
 二、は色彩圓の反對に在る色を合せると白となるのです。そは學理上の話で我々の繪具て、目分量の合せ方ては出來ません。本號の色彩論にも其事があります。
 三、油に見える枝や葉計りてなく、後部にある枝や葉も透けて見えるのを描くといふ事で、それがなければ前の枝も出て來す樹に丸味を持たするが出來ません。物質寫生の時注意して研究すべきものです。
 四、遠い山なら形を變へて低くしてもよいでせうが、近い山は他の釣合を考へてからでなくば繪を毀して仕舞ひませう。風景畫に天色が必要といふ事もありませんから、其樣な塲合には山麓丈け描いたらよいでせう。

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