寄書 畫を學びたる爲に得たる顯著なる利益

孤_生
『みづゑ』第三 P.18
明治38年9月3日

 畫を學んだために得たる著しい利益としては、植物の試驗に應用の才がきけたのと、修業旅行の作文をするのに、スケッチブックから面白い材料を取り出した等である。又事物を觀察する力が密になつたり、劣等なる情緒の發したる時に、畫の爲に、これが唯一の慰藉者となつて呉れたなどは、畫を學びたるために得たる顯著なる利益と云つても敢て差支へはあるまい。斯かる事は恐らくは僕一人でもあるまいと思ふ。

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