寫生法遠近法(二)路上の人
真野紀太郎マノキタロウ(1971-1958) 作者一覧へ
眞野紀太郎
『みづゑ』第四
明治38年10月3日
此圖は單に人に限らず、電柱街燈の類にも應用さるゝことの出來る、同一の高さのものゝ遠近の割合を示したものである。此圖にては畫者は路傍に在て三尺の高さと見做す。そこで假にA、B、Cの塲處に、五尺の高さの人が居るとして其遠近圖を作るには先つ水平線H、Lを引て、畫面なり又は畫面外なりへ垂線を作り、畫面の底より水平線迄を自己の高さ三尺として、其割合で人の高さ五尺即ちE、Fを得、其E、F點から水平線に向って斜線を畫きG點に結合させる。かく定尺を作つて置て後、Aの人の高さを知るには、AからA′迄線を引きA′、A″の垂線を作り、更にA″よりA、A′に對する平行線を引けば、その平行線の間即ちA′、A″間の幅が、Aの塲處に居る人の五尺の高さとなるのである。BもCも同じ力法によつて畫き現はす事が出來る。勿論此圖は人の高さを同一と見て作つたものであるから、實地に臨んでは多少の相違を生ずるのは免れぬ。只この法を知つてゐれば、添景人物が大き過たり、小さ過たりするやうな失策はせぬであらう。