問に答ふ


『みづゑ』第四
明治38年10月3日

 問 水彩畫の栞一たび世に出でゝより、これに似よりたる種々なる畫法手引草の類數多出版されたり。右は何れも一通り口を通し置かば利益多からんと思へど如何のものにや尾張畫狂生
 答 從來出版されしものには、格別新しき説も認めず、其あるものゝ如きは、水彩畫の栞其儘にて、唯其文字を前後させしに過ぎず。水彩畫の練習は眞面目の問題にて、奇術妙法のあるべきやうもなければ、何れも五十歩百歩のみ、廣く見るの以要なからん。尤も技術の進歩に伴ひ、研究上多くの意見を參考とする塲合は別なれど概して是等の類書は、其説く處一致せず、時には前人の足跡を踏襲するを耻ぢて、ことさらに異説を立て、讀者を迷はすものなきに非れば、初學の士は寧ろ己れの信ずベき一書に辿りて、他を見ざる方却て益多かるべしと思ふ。

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