本紙の進歩


『みづゑ』第四
明治38年10月3日

□本誌は片手間仕事の萬事不行届勝であるに不拘、發行部數も豫定より増し、今では經濟上の方面も多少利益のあるべき見込がつきました。これ全く讀者諸君の御厚意と、深く感謝致します。
□老練なる雜誌業者は、本誌創刊の際我々を戒めて「雜誌が少し賣れ出したとて價を下げたり、改良といふて金をかけてはいけぬ他日賣行の減つた時に苦しまぬやう用意せねばならぬ」と申されました。
□これは一應尤の事で、何事でも盛衰は免れませんから、其時の用意を致して置くは賢いことに相違ありません。
□乍併吾々は此雜誌をもつて讀者諸君の共同物とも思つてゐます。夫より得たる利益は、讀者讀者へ配當するのが至當であらうと思ひます。且我等がかゝる决心を以て此雜誌を編輯してゆくなれば、必ず讀者諸君が本誌を棄て給ふまじと固く信ずるのであります。
□さて其配當法は、讀者多數の御所望により、毎號の寫眞版のうち其一葉若くは二葉を癈して、特に主任大下藤次郎の手になる風景スケッチの彩色版石版或は原色版)を一葉加へます。(着色版は寫眞版に比して四五倍の費用を要します)猶追ては不殘彩色版にする筈です。
□前記スケッチは、初學の方の參考になるやうに、筆者自ら一々着色の順序を記して寫生の塲處、季節、時間等、可成精しく説明致す考です。
□時には、他の水彩專門家の筆をも交へます。又御寄稿の寫生畫中にて、傑出せるものぶあつたら登載する積りです。
□右は、みづゑ第五より實行の考で、專ら準備中であります。
□本誌は以上の如く、利益あれば必ず諸君に配當致しますから、何卒永久に御愛讀あらんことを希望致します。

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