寄書 水彩畫と宗教

TH生
『みづゑ』第四
明治38年10月3日

 人の一生涯を通じて、最も愉快に、最も希望に滿ちてあるべき青年時代を、僕は今淋しく病牀の上に過しつゝある。
 此悶々の情を宗教に依て慰せんか、それには僕の頭腦が餘りに科學的である。
 處が水彩畫を習ひ初めてから、僕は一枝の畫筆に依て、然もいかに多くの慰藉を得つつあるであらうかよ。
 實に水彩畫の人の心をピユーリティーならしむる力は、遙に迷信多き宗教の上にあると思ふ。水彩畫を學ぶ多くの青年諸君の中には、僕と感を同ふせらるゝ方も少くないと考へる。

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