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『みづゑ』第五 P.17
明治38年11月3日

□本會は追て會員組織にして、會とみづゑ愛讀者諸君との關係を深くし、益々水彩畫の發達に力を盡したいと思ひます。
□世間には、雜誌の代幾月分拂込めば誰でも會員になれて格別會員の特權もなく、又義務もないといふ、極めて無造作のもありますが、本會はそのやうな無意味なものでなく、會員には充分利益を與へ得るやうな方法をとりたいと思ひます。
□自己の作品の批評若くは添削を受け得る事。會の出版物を低廉に求め得る事。大家の肉筆畫を借覽し得る事。時々開催の寫生會へ出席し得る事。其他諸君の御要望を承つた上、取捨して定める積りです。
□義務の規定は考がありませんが、約束を固くするため多少の入會金を申受けるか、或は自作の水彩畫を出して頂いて試驗の上諾否を極めるやうにしたく思ひます。
□本誌初號よりの直接讀者、又は引續き何册以上の愛讀者、一時に何册以上の前金拂込者なども其資格の一に致したく思ひます是は雜誌みづゑの基礎を作る上から必要であると考へます。
□以上の件につき御意見のある方は、御遠慮なく御通知を願ひます。來替あたりから實行したく思ひますから其つもりで可成早く願ひます。
□みづゑ發送の際挿入する繪ハガキ挾みは遠地では途中で損傷するやうにきゝましたそれに此雜誌は表紙が厚い故、其儘發送しても中の口繪の損じる憂がありませんし、且諸君も最早御飽きになつた事と思ひますから本號限り廢す事に致しました。
□その代り、直接の讀者へは別項廣告欄にある通り、繪ハガキ挾の價丈け値下げを致しました。
□みづゑ第四は石版印刷面倒にて出版が遲れ、直接讀者へ送るべき上製糸綴の分全部間に合はず、夫がため並製も混りました。
 並製を御受取になつた方へは御詫申上ます□本號から水彩スケツチの石版刷を一枚加へました。初めは簡單なものより追々複雜なものに進んでゆく考へです。
□この口繪には、諸君が筆者の後に立つてゐて、親しく見てゐられるのと同樣な結果を與へたく思ひまして、説明をつけましたが、猶ほ不明の點があつたら御質問をなさいまし。
□本號には、猶一枚の寫眞版口繪を入れる筈でしたが、製版がよく出來ぬため見合せました。是からは、寫眞版の口繪は鉛筆か一色畫ばかりを一枚丈けにして、三四號目に彩色版を一枚づゝ増して見やうかとも思つてゐます。
□本號から讀者の領分といふ欄を設けました。水彩畫に關したものは何でも御投書をなさい。
□本會の秋季寫生會第一會として同志三人十月中旬上州赤城山へ參りました。多少目新しい寫生畫も出來ましたし、道中では少なからぬ滑稽も演じました。結果は十二月のみづゑにて御紹介申上ます。猶同號には彩色石版畫三牧を挿入します。

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