寄書 初めて戸外寫生を試みし時の感

李有
『みづゑ』第五 P.18
明治38年11月3日

 私が畫をちよいちよい書く樣になりましたのは丁度四五年前の小學校時代で其の頃は日本畫のみでした丁度昨年の冬休みに京都の學校へ往つた友人が國へ歸つて來て君は日本畫僕は水彩畫で一つスケツチに行こうと云ひますから初めではあつたが出掛て往て見事に失敗しました其れが口惜しいので遂に水彩畫をやるやうになつたのですが素が貧書生の事で手本を買う事は出來ず織田さんの水彩畫法と云ふ本を買つてよみました夫から此夏休みにも先の友人と共に寫生をしましたが今度は少しはよく出來て嬉しく思ひましたどうも寫生は戸外でやるに限るやうです興味も多く又色彩等も眼前總てが自然ですからどうしても實物に近い色が出ます吾々貧書生には兎角野外寫生が水彩畫練習の最も早や道だと思つて居ります否信じて居ります
 評色ばかり實物に近くてもいけません、形も調子も大切です。

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