寫生中の出来事
『みづゑ』第七
明治39年1月3日
ある朝、護國寺の境内で寫生をしてゐたら、そこへ陸軍墓地の歸途らしい一小隊ばかりの兵が來た。皆々背後に立つて見てゐたが、あとから來た兵卒連は何も知らず前へ立つと、後ろの軍曹先生大喝一聲『コラー、前へ立ツナー』と怒鳴りつけるので、叱られる兵卒よりもこちらの方が却てびくびくした。
『みづゑ』第七
明治39年1月3日
ある朝、護國寺の境内で寫生をしてゐたら、そこへ陸軍墓地の歸途らしい一小隊ばかりの兵が來た。皆々背後に立つて見てゐたが、あとから來た兵卒連は何も知らず前へ立つと、後ろの軍曹先生大喝一聲『コラー、前へ立ツナー』と怒鳴りつけるので、叱られる兵卒よりもこちらの方が却てびくびくした。