批評 戀の繪葉書
うぐひす
『みづゑ』第七 P.14
明治39年1月3日
ハートに櫻の模樣、華美でもなく澁くもなくどちらともつかぬ頗上品な凝つた表装で、中を見ないうちからアヽ欲しいと思はせるのは罪な事である。内容は總カツト入りで、伯林四季、伯林十夜物語、附録として獨乙奇談といふ面白い記事のほかに、和田氏の苦心になつた挿繪四枚、粹な獨乙の畫ハガキ十枚、何れも珍とすべきものである。さて御本尊の本文は、實はまだ不殘見ないが、是は云ふ丈け野暮で、其内の一節を一寸覗いたら最後もう止めやうと思ひながらも遂に釣込まれて仕かけた用事も其儘二三十分あはれ何處迄も罪つくりに出來てゐる書物ではないか。(うぐひす)