評
『みづゑ』第九 P.18
明治39年3月3日
評
◎小影細川花紅著
京橋區銀座三丁目 左久良書房
四六版製本費金二十八錢
寫眞熱心家の道樂になりし美しい氣の利た小册子で、七くさ、えと馬、八千代艸の鮮麗な寫眞ヱハガキが三枚口繪としてアルバム式に挿んである、中は輕妙な韻文や散文で讀で面白く印刷用紙に畫學紙を用ゐたなどはわるく凝つたものである。(水聲)
◎如何に家計を整理すべき乎
青山千駄ケ谷 鹿鳴社
四六版二二四頁正價三十五錢
家庭改良に熱心なる羽仁もと子女史の新著で、内容は書名の示す通り、新にホームを造らんとする人は勿論、巳に主婦たる人々にも極めて有益なる好著である。(み、を、)
◎ハガキ形スケツチ箱
神田區表神保町文房堂
薄鐵製一個八十五錢
ハガキ大の寫生箱で、中にはパレツトあり、繪具十八色を入るべき仕切あり、小形な輕便なものでありて、これにブロツクを入れて持つて歩けば一寸した景色を寫すに重寳である。
◎繪葉書木曾路野田道三筆
◎紅百合太田三郎筆
日本橋通二丁目松聲堂
前者は六枚一組三十錢後者は同じく三十五錢、前者は景色畫で清酒なる描法で見て心持よく、後者は人物畫で當世の若き婦人を描けるもの石版二十何度刷といふ手のかゝつたものである。
◎水彩ヱハガキ山と水丸山晩霞筆
◎清嬌太田、鹿子木、滿谷、和田、岡田、藤嶋筆
小石川久堅町日本葉書會
丸山氏は舊作であると迷惑して居らるゝが、淺間山下の秋景はよい出來である。清嬌は大きな繪を三色版に縮めたもの、原畫の面影はよくわかる。何れも六枚一組で前者は十八錢後者は三十五錢。