花(水彩畫楷梯の一節)
『みづゑ』第十
明治39年4月3日
花の單一にして形の大なるものを求め、先づ其花より先に著色し、次に幹、葉等に移り順次他に及ぼすべし花は往々僅かの時間に色も形も變ずる事ある故、最初に畫くことは必要なり。
花を主として畫く塲合には、後景に多大の注意を要す、後景明るき時は白き花、黄なる花は遠近を示し難かるべし。色に於てもよく補色の應用をなし、主なる花の色を奪ひ、又は害せぬやうにせざるべからず、且花の繪は往々艶美に流れ浮華に陷り易ければ、藩面によく落つくやうに色の使用を愼むこと肝要なり(水彩畫楷梯の一節)