問に答ふ


『みづゑ』第十
明治39年4月3日

 注意 水彩畫に關係あるものに限る◎印は答。一般に對し利益なきものは載せず
■1銀色の固形繪具を擦り下すと黒き汁を生じ畫面に塗るも不結果なり救濟法なきや2繪具の乾燥を防ぐためグリスリンを幾度塗つても有害とならざるや3カドミユームエローの代用品又は合色して同樣の色を得る繪具ありや(本郷黙蛙生)◎1棒状の金色銀色は良品にあらず別に救濟の道なし、金銀粉をアラビアゴム若くは板ニカワに溶きて用ふるをよしとす、2有害ならず、3クロームエローにて代用すべし但カドミユーム程永久ならず■町の寫生に屋根が多く重なり合つてゴタゴタになるので手がつけられぬどうすればよいのですか(わからず坊)◎遠くなる程形を略して大體の趣を得るを主として寫せばよい、幾度も寫生して経驗して御覽なさい■私の畫は細かくなり過て困ります勉強したら粗い筆遣ひが出來ますか(横濱凸坊)◎本號の寫生の話にあるやうに物の細部を見ず要點丈けを寫すやうに研究したらよいと思ふ■チユーブの繪具が固くなったら如何したらよいでしよ(九萬人)◎チユーブを破つて繪具を出し乾製のやうに湯に入れて練り直すのです■グレスとはどんな事に候や(KY)◎重潤といふ事で一度塗つた上へ再び淡く繪具をかける事です■私の繪は濁つて困ります何故ですか(博多海北生)◎不透明色が多過るのでせう、重潤の場合など透明色を用ゐて御覽なさい■1フーカスグリインの合成法如何そして春野の緑に使用し得べきや2朝の雲(春)にはクリムソンレーキを夕方の雲にはバーミリオン、ガンボージを多く含むと三宅先生は云はれたが寳際朝の雲にも夕と同じく多くバーミリオンを含むが如し如何な理由か(伊勢服部生)◎1カンボーヂにアントワープブルー若くはプロシアンブルーを混ずれば粗ほ同樣の色を得べし、此色の一號は春草に用ゐて可なるも多量に用ふれば華美に流るゝ恐れあり2朝の空には寒色の光線夕方は暖色を通例とする故かく説明されしならん例外ある事は勿論なればあまりに書物に頼る事なく自ら研究されたし■三宅先生の畫などには時として何れの物體の影も皆セピヤのみを使川されたるが如きもの往々見受たり物體の色により陰影の色も異なる方よろしきゃ而して陰影は其物體の陰よりも濃くすべきものなりや(石見、孤崖)◎物體の色により影の色に多少の相違を生ずるは當然なれど粗末なる石版の類にては細かき區別を示し難き故ならん又陰影は物體より明るき場合あり暗き場合あり光線の強弱物髄の質にもよる亭散實地寫生によつて實驗せられたし■外國の鉛筆畫手本の市内販賣所及其代價を知りたし(SB生)◎丸善書店に問合されたし、佛人カツサン氏の鉛筆手本は有名なれど價高し、英國ホースターの手本も佳なれど品切との事。

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