繪ハガキ競技會記事(第二十二回)
『みづゑ』第十二
明治39年5月3日
繪ハガキ竸技會記事(第二十二回)
蝶(意匠)若草(技術)
一等鐘に蝶和賀井恂戸山の春山田全一
二等蝶の模樣犬飼荘水花野筒井角太郎
三等蝶の影古川熊三拜島の水車瀧島寛水
四等蝶と人山田全一坂道相田寅彦
五等蝶にたんぽゝ相田寅彦雪の下草久保周一
六等遊蝶花中尾正幹堤の上和賀井恂
七等菜の花に蝶巖谷爽日田舍の春赤城泰舒
八等蝶番須崎俊治牧場中村愛亮
九等荘子の夢大橋三平田舍道鵜澤四丁
十等蝶のおもちや飛鳥井信野邊海老名研二
十一等同平澤光公園の春井上清一
十二等紙の蝶井上清一若楽飛鳥井信
十三等雌蝶雄蝶小林誠之助山の春佐藤清
十四等 同丸濱善二郎樹の下岡田恒輔
十五等蝶の模樣横田順三農家の庭榎本滋
十六等蝶の舞榎本滋野邊津雲孝
十七等胡蝶の曲丹羽光次郎梅の下草落第生
十八等胡蝶の宿り牛木勇水邊平澤輝吉
十九等手品師後藤百次河岸田中桂月
二十等蝶の踴久保周一春の野須崎俊治
以下略
三月二十五日開會、出品者四十五人、總數百六十二枚、選評の結果上記の如し
意匠の一等は、色調穩和にして快よく圖抦またあしからず。二等は斬新といふ圖案にはあらざりしも、是又色の調和無難なりし。三等は紙障にうつれる蝶の影なるが、隙子の隙間に蝶の本體を見せしは作者の意を注ぎし點ならん、されど單に影のみの方面白かるべし。惣じて今回の出品は惡作殆どなく、意匠に奇抜なるもの多かりし、意匠に於てはかく好結果なるに不拘、技術之方は圓熟なる作少なく、二等は少しく華美に過ぎ、三等は添景人物甚しく小に、四等は道路に傾斜の趣見えず、且忠實なる寫生と認むべきもの割合に多からざりし。
五月課題
斜(意匠)
朝(技術)
五月二十日〆切
五目二十七日開會
▲注意
意匠は圖案畫にして繪ハガキの形式を備えしもの、技術は寫生を主とし余白を殘さず一枚の繪と見做すべきものなり。