繪ハガキ競技會記事(第二十三回)


『みづゑ』第十三 P.17
明治39年6月3日

繪ハガキ竸技會記事(第二十三回)
 夕暮(意匠)櫻(技術)
 一等歸鴉大橋三平野道の花和賀井恂
 二等夕暮の歌榎本滋山さくら久保周一
 三等綾瀬の夕森榮一花一枝赤城泰舒
 四等夕暮の曲金江輪書物と花小林誠之助
 五等月に蝙蝠相田寅彦花瓶の櫻牛木勇
 六等夕雲加藤和夫滿開加藤和夫
 七等晩歸後藤百次路傍の花相田寅彦
 八等月に蝙蝠小林誠之助同中村愛亮
 九等夕雲赤城泰舒八重櫻山田全一
 十等王子の夕ぐれ赤壁徳彦同村上英雅
 十一等點燈中尾正幹崖上の花榎本滋
 十二等夕の富士森斡男花の枝呉文平
 十三等夕陽山田全一吉野櫻吉井孤雁
 十四等夕暮の川吉井孤雁花一枝中尾正幹
 十五等夕燒呉文平垣の内大橋三平
 十六等晩歸中尾春雄花盛り津雲孝
 十七等ねぐら入り和賀井恂蕾の花柳田春次郎
 十八等歸帆鳥谷春山花一枝後藤百次
 十九等晩歸平澤輝吉同松山忠三
 二十等月に蝙蝠北村霞峰落花飯田紫山
 以下略
 四月二十九日開會出品者三十六人惣數百三十七枚選詳の結果上記の如し
 今回は平生に比して出品數も少なかりしが意匠には佳作と認むべきもの殆となかりしその一等と雖も平凡を免れず只色調の穩かなりし爲めに選に上れり二等は手際よき出來なりしが夕暮の歌三つ迄並べしはあまりうるさかりし五等は面白き圖案なりしも色の配合惡しく十一等はよき思付なれど技巧に欠くる處ありし技術(櫻)は存外傑作多く一等はよく櫻の趣を得たり二等三等又忠實の寫生と見るべく七等は繪として尤も優等なりしが主眼の櫻の描寫に欠點あり氏は東北寒地の人思ふに稿を寄するの時花未だ開かざりしなるべし
 六月課題
 菖蒲(意匠)
 雨(技術)
 六月二十日〆切
 六月二十四日開會
 ▲意匠菖蒲は花にても葉にても差支なし技術雨は寫生を尚ふ事例の如し

この記事をPDFで見る