寄書 蛇の豫防法

枯星
『みづゑ』第十三 P.18
明治39年6月3日

 蛇!僕は人並勝れて蛇が大の禁物まして寫生最中になど先生に出られたらどんな好景色其畫が半分以上仕上がつて居てももう靜に筆を採る事は出來ない位です、否諸子もあまりお好きではありますまい、僕も色々と此防ぎ法を考へた結果一つ良法を案出しました、それは寫生に出る時極安線香を四五把求めて、三脚をすへし近くへ一把くすべるのです、他方か見るとまるで野中の地藏尊の樣であまり見よくはありませんが、蚊群なども煙に恐て來ませず、總て夏になると出て來る毒虫なども一切近よりません。近く蛇の時候になりますから山間などに寫生を致さる方の御參考にまで

この記事をPDFで見る