寄書 大阪附近寫生地案内

乙部孝
『みづゑ』第十三 P.18
明治39年6月3日

 大阪附近にはよい寫生地が澤山ある。先づ其中で一番よいのは神崎川から兵庫の武庫川邊であらう。山も見えれば森もあり水も舟もある。又海邊にも近いのでなんでもすきな畫題が得られる。次は市を南へ天下茶屋から住古濱寺等で、白砂青松の間から青疊を敷いた樣な海、其を走る舟遙に眉の樣な淡路島が見ゆるなぞ、眞に一幅の水彩畫である。其他櫻宮や鶴滿寺の櫻花桃山や倉治の桃花、十三堤や櫻島の菊花等どれも諸君のスケツチブツクを飾るに充分であらう

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