夏期講習會について
『みづゑ』第十三 P.19
明治39年6月3日
□二三の人達から夏期講習會開催の請求があるから、希望者が多數であれば催して見やうと思ふ。よつて有志の方は宿所姓名を明記して假に本月二十日迄に本會へ申越されたい。
□講習會の規定は粗ぼ左の通りである。
一會期、本年八月上旬より三週間
二講習課目、墨繪、水彩畫、透視畫法其他水彩畫に關する講話(望によりては教授法を加ふる事あるべし)
三講師、丸山健策、眞野紀太郎、大下藤次郎(主任)
四會場、東京府西多摩郡青梅町大柳分校。
五會費、記名料金壹圓、講習料金貳圓(講習課目の數により増減なし)
以上
、□私共の理想の講習會は、開期中講師と講習生と起居を共にし、一定の講習時間外には、一しよに寫生に往たり、課題を出して圖案を畫たり、雜談もし遊びもして、師弟などといふ隔てを取去つて、三週間を尤も有益に且愉快に過し度思ふのである。
□東京で開いたのではそのやうな自由が出來ぬ、それで場處を青梅としたので、同地は態々避暑にさへ人のゆく處で、風景もよく寫生をするに好位置が澤山あり、町の重な人々も同好者であつて、會場等の便宜もよい。夫に汽車も三時間は費すが、一日七回の往復があるから、東京より徃くにも不便ではない。
□青梅にての費用は、汽車賃往復金壹圓の外に宿料は、三週間金拾圓以内で、確定の上は幾らか割引させる筈である。尤も近處の寺の座敷でも借りて自炊すれば極めて廉に上るであらう。
□此講習會は、曾て鉛筆を持つた事のないといふ人達にも、開期中に一通り總ての智識を與へ將來獨習して往ける道を拓く計畫であるから、如何に初學の士と雖も入會する事が出來る。
□猶開期中は、各講師の所有せる繪畫に關する書籍印刷物等にて、講習生諸君の參考となるべき物は一通り備へて置く筈である