春鳥會假規定


『みづゑ』第十三
明治39年6月3日

 目的
 一本會は水彩畫の發達及び普及を目的とす
 會員の種別
 一會員を別つて正會員及び賛助會員の二とす
 正會員は斯道に熱心にして自己の製作品を提出し本會幹部の承認を得たるものに限る
 賛助會員は水彩畫に趣味を有し本會の趣旨を賛成せる者より成る
 會員には望により實費を以て徽章を頒つ正會員は赤色の七寳賛助會員は緑色とす
 賛助會員にして自作提出の上承認を得る時は正會員となる事を得
 會員の權利義務
 一會員には毎月一回雜誌『みづゑ』を配布す
 一會員は製作品の批評及添削を受くる事を得べし
 批評は一人につき一ケ月一回三枚迄添削は一枚に限る●作品を送らざる月は棄權と見做す作品の大さは一尺立方(凡そワツトマン八ツ切大以内とす●添削を求むる繪は板紙に挿み送るべし、折目あるもの巻きて送るものは添削せず●毎月廿日迄に送るものは翌月五日迄に返送すべし●作品と同時に相當返送料を送るべし●小包若くは書留の外途中紛失の責に任ぜず
 一正會員は本會開催の展覽會に出品する事を得
 一會員には本會の出版物を實費にて、頒つべし
 一會員にして本會開催の講習會寫生會等に加入する時は特別の待遇を與ふべし
 一會員には一年數回本會特約彩料舗の物品代價割引券を送るべし
 特約割引を承諾せし文房堂はある種の繪具を除き大概定價の壹割を減ずる約束なり
 一正會員は繪ハガキ競技會の出品に會費を要せず
 一會員の望により一枚に付金五圓以上の擔保金を納むる時は本會主幹及客員の揮毫にかゝる水彩畫を貸與する事あるべし
 貸與規限は二週間●繪柄及筆者を指定する事を得ず●遞送其他の實費として一回につき金參拾錢を前納すべし●擔保金は繪畫歸着後一週内間に返戻すべし
 貸與せし繪畫に損傷紛失等ありし時は擔保金を沒収し價格に不足を生ぜし時は追徴すべし
 幹部の見込により擔保金なしに繪畫を貸與する事あるべし
 貸與請求は毎月二十日より三十日迄とす
 一會員は毎年二回自己の作品を本會へ提出すべし
 提出の時季はみづゑ誌上に報告す賛助會員にして正會員たる事を望まざるものは作品提出に及ばず●前項繪畫は等級を附して『みづゑ』紙上に報告すべく、優秀なる作は寫眞版として掲載すべし
 右提出の作品は返戻の需に應せず一會員は戸外寫生の際に徽章を携帶すべし
 一本會への通信には會員の種類及番號を明記すべし
 一會員は各自技術の進歩を力むると同時に品性を高むる事を心掛くべし
 本會は温良なる紳士淑女の集合に成れる品格ある一團體として社會に立たんと欲す故に會員は技術の進歩よりも寧ろ品性の修養に重きを置かれたし
 會費
 一會費一ヶ年金貳圓とす
 會費は半ヶ年分以上必ず前納すベし
 會費領収證を要するものは相當郵券を添ふべし●東京市内と雖も會費受取人を出さず
 一本會の會計は幹部に於て總て處理し會員に關係なし
 入退會
 一會員たらんとする者は入會證履歴書に記名料金壹圓を添えて申込むべし但正會員たらんとするには自作の繪畫を提出して幹部の承認を受くべし
 入會證の文面は適宜なれど必ず捺印を要す●履歴書には住所身分職業姓名年齢及學歴等を明記すべし●記名料は本會參考品購入費に宛つ幹部の見込により記名料を免除する事あるべし
 一退會せんとするものは其理由を明記し會員章及徽章を添えて届出べし
 前納の會費に對しては雜誌『みづゑ』を交付すべく記名料及徽章實費は返却せず
 一會費の前納を怠りたる時は退會と見做す
 一本會の體面を汚す不都合の所爲ありたる時は退會を命じ會員證及徽章を返納せしむ
 此際には前納の會費記名料徽章實費等一切返却せず
 以上
 春鳥會幹部河合新蔵
 鵜澤芳松
 明治三十九年眞野紀太郎
 六月丸山健策
 森脇英雄
 主任大下藤次郎

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