繪ハガキ競技會記事(第二十五回)
『みづゑ』第十五 P.15
明治39年8月3日
菖蒲(意匠)雨(枝術)
一等菖蒲模樣相田寅彦湖畔の雨海老名研二
二等池の面工藤太郎小川の傍相田寅彦
三等圓形模樣森榮一市中の雨赤城泰舒
四等一色模樣中尾正幹早稲田須藤隆次
五等汀の水影那須田紅池畔の雨瀧島寛水
六等菖蒲模樣中尾春雄勝手元山田全一
七等同上横田順三夕ぐれ兩角團次
八等菖蒲に遊鯉森幹男多摩川赤壁徳彦
九等菖蒲に金魚久保周一田舎道高橋松治
十等八ツ橋樋ロ絹子雨蛙呉文平
十一等あやめ團子後藤百次林の雨大橋三平
十二等菖蒲園兩角團次港の雨佐藤奇巖
十三等圓形模樣小高露子同久保白泉
十四等水と牡若比奈地利八細雨横田順三
十五等圓窓に菖蒲園佐々木眞太郎河畔樋口絹子
十六等小池石田翠彩池畔鈴木登
十七等菱形模樣河鰭達夫社頭の雨北村露峰
十八等同中尾謙橋頭後藤百次
十九等雨の菖蒲園須藤隆次雨の路森榮一
二十等池畔北村霞峰坂道大矢幾太郎
(以下略)六月二十四日開會、出品者六十五人、總数二百二十七枚、選評の結果上記の如し。
課題の平易なりし爲めか、意匠畫は佳作極めて多かりし。枝術の方は六月上半月雨少なく、實寫の機を得ざりし爲めにや、充分に其感の現はれしもの少なかりし。空のみを見れば雨天にて建物や傘などの色は充分日光の輝けるもありし。猶注意し置たきは十枚を描く時間にて二三枚の叮嚀なるものを出されたく、意匠畫は工風の上にも工風されたく、寫生畫は研究を重ねし結果を出されたき事なり。又頻りに金銀泥を用ゐらるゝ人あるが多少素人嚇しの氣味にて面白からず、元より惡しといふにあらねど、使用の場處に注意を拂はれたき事なり。次に近來新聞雑誌に出たる圖案の燒直し(甚しきは其儘)を自己の名にて出さるゝ人あり、此競技會は、拙にても自己の考案に成れるものを尚ふ定めなれば、爾來疑はしき作は其儘出品者に返戻すべし。
八月課題暑熟(意匠)
河(技術)
八月二十日〆切八月二十五日開會
▲八月二十五日は午後一時より青梅に於て開會すべし。但作品は例月の通り東京春鳥會宛の事