問に答ふ


『みづゑ』第十五 P.19
明治39年8月3日

■外國出版水彩畫手本の花などには色彩が華美に過るやうに思ひますが肉筆もあの通りですかそれとも石版の故でせうか(阿波エス、アイ)◎肉筆でも華美なのはあるが多くは印刷のためなり■1アルフレツド、イースト氏とパルソンス氏とは別人なりや2エメラルドグリーンを使用する時はガドミユームを用ふる不可なる理由3カドミユームとはカドミユームエロー及オレンヂの惣稱なりや4地平線を低くする時は何故が書が大きな感じするや又如何なる時に低くするものなりや(陸前KY生)◎1別人なり何れも曾て吾國に來遊せしをあり2變色の恐ある故ならん責驗せず3前の場合は惣稱なれどカドミユームにはデユープ、ペール、オレンヂ、ミツドル、レモン、エキサイト、ぺール等の種類あり4横幅の廣き部分を包括する故に、又雲や高き樹木、建物等を寓す場合に■1水彩畫階梯に意を密にして筆を粗にせよとの文意如何2調和と結合との相違3『みづゑ』紙上の石版寫眞版は蓼考畫として可なるや4水彩畫と油繪の特長を比較されたし5ガンボーチは變色するや代用品ありや(曙町默蛙生)◎1觀察を充分にして描寫の時に筆數を多くするを避けよとのこと2よき調和とか惡しき結合とかいふ場合は同意味なれど調和は混合を意味し結合に、井列を意味する時あり3勿論諸君の參考のために掲出せしものなり4水彩畫は瀟洒なるものを寫すに適し油繪は濃艶なるべし一々擧け難し日本と水彩を再讀されよ5其儘用ふるれば必ず變色す(變色といふよりも、消失するなり)總ての黄は殆ど消失する性質あり比較的永久なるはカドミユーム黄ならん■圖案、模樣、意匠等の事を説いた書物なきや英文にても可(谷澤)◎編者の手許には適當なるものはないが丸善又は博文館の書籍目録を取よせて見給へ■1畫嚢の紐は何故一方は上一方は下に附着するにや寫生箱も同様になすものにや2大判ケントは何れが表面なりや3先方に深い緑の木あり前に明い緑の木ある場合の着色手段4遠景にホワイトの多量を含むだ場合に前の景の樹木は一々其葉を残すべきや又は塗込んでもよきや5パレツトは畫具を混ぜたら一々拭ひ去るものにや(横濱凸坊)◎1負ふ時背によく着くため、寫生箱は側面中央より稍上部に紐を附す2普通滑なる方が表面なれど水彩畫を描くには粗なる方を稍強く海綿で磨つて水貼して用ゐる3意味不明了なるが明るい緑を先に着色して後に先方の緑をかくもよく其反封のやり方にてもよし1一々殘すか又は遠景を描き了りて後海綿筆又は吸取紙で取って後に描きてもよし5一々拭去るにぼ及ばねどあまり醜きときは目的の色を得難し■遠近法獨習の適當なる書物を知りたし(方園生)◎平瀬氏著、用器畫法第三、解説共三十八錢、日本橋通三丁目成美堂發行。井汲氏著、用器畫法第三、解説共三十八錢、日本橋本町金港堂發行。寺野氏著、用器畫教科書續編、附圖共五十七錢、同上發行。まだ澤山あらんも只今知れてゐるは是丈け■水彩畫階梯、仝栞、仝手引の他に初學に適當の書ありや(下谷浦南)◎以上の書にて盡たりと思ふ類書多けれど大同小異なり又一の信ずる書の他は亂讀せざる方よし■1グリセリンの代價と賣店を問ふ2水彩畫を寫生によらず理想で畫く人あり有害無釜にや(美感生)◎1普通賣藥店にあり高價のものに非ず2夫にて滿足してゐる人はよし但大成は望むべからず

この記事をPDFで見る