繪ハガキ競技會記事(第二十六回)
『みづゑ』第十六
明治39年9月3日
繪ハガキ竸技會記事(第二十六回)
螢(意匠)凉風(技術)
一等 光りの輪田上勉輔河邊工藤太郎
二等 小川のふち 松浦政次郎 夕風 赤城泰舒
三等 籠漏る光 藤田紫舟 納凉 志賀正人
四等 池畔 中尾春雄 橋場の渡 山田全一
五等 ほたる草中尾正幹芦の蔭藤田紫舟
六等 模樣 飛鳥井信 海邊 久保周一
七等 川風 須藤隆治 水邊 須藤隆治
八等 夜の行列工藤太郎樹蔭 高橋松治
九等 捕虫器 宮澤汀煙 小川 松浦政治郎
十等 螢 籠 金江龜 加茂川 佐藤清
十一等 柳に螢 高橋松治 緑蔭 海老名研二
十二等 螢の光高橋直子扇子中井栖石
十三等 團扇に螢 ★口絹子 河邊 後藤曉露
十四等 草の中小高露子飛瀑相田寅彦
十五等 樹蔭近江光峯舟の上小島虎太郎
十六等 夏の夕 立花甚之助海上の月 筒井角太郎
十七等 螢と書物赤城泰舒風鈴飯田紫山
十八等 螢狩右田富藏電氣扇池田知三
十九等 模樣 池田知三 水郷 半木勇
二十等 螢籠 島田晩韻夕凉 鈴木昇
(以下畧)
七月二十二日開會、出品者五十六人、二百六枚、選評の結果上記の如し。
螢の光りは波状をなし、其色藍を帶びたる黄にして寒色なり、意匠の一等は、よく其自然を捉へ、圖樣も新しかりしが、他は殆と同一型に、暖かき黄なる光に、圓き珠を尻に添えたるもの多かりしは、研究の不充分なるを證すべきなり。技術の部は、意匠に比して見るべきもの少なかりし、技術は、一層素養を要す、諸子は此方面に、向つて奮勵せられたし。
猶當日は、日本橋なる水彩畫講習所樓上に於て開會、成績品の陳列互評等あり、終つて二三の餘興を催し、薄暮樂しく散會したり。
九月課題
意匠氣抜(キバツ)
技術初秋
九月二十日締切仝二十三日午後二時より日本橋區本石町十軒店三、門井學校内に開會
但出品畫は小石川區關口駒井町春鳥會宛に送られたし
****■本號は飛騨の旅に全誌を供せしを以て一等の寫眞版は次號に掲出すべし