問に答ふ
『みづゑ』第十七 P.21
明治39年10月3日
■1丸善にある外國製の水彩畫臨本は高價であるが夫丈けの効ありや2丸山先生の畫帖ありや3大下先生の風景畫帖第二集は何日出るや4パステル畫の手引を出版されたし、又描法の講話を『みづゑ』に登載されたし(筑紫、畫狂)◎1日本製の安物を多く求むるよりは増なれど、外國製にても必ずよき物のみに非ず、寧ろ臨本など的にせずに寫生を試みられよ2未だ出版されしをきかず3當分出版せず4考へ置くべし■大西洋の浪の筆者はボウエルかポウエルか(陸前KY生◎POWELLなればポが正しきなり■普通使用のスケツチブツクは太さ及紙質何程のものが適當なりや(初學者)◎B印畫學紙の二十切形位ひのものを普通とす■十五號色彩に就ての文中『霧はまた固有の色が變化させる。水蒸氣に日光が通じて來ると一種の色が現はれる』とは如何なる意味にや(小澤雪嶺)◎例へば緑の樹木も霧といふ一種の水蒸氣がかゝると、其固有の緑の色を變化させて灰色を帯はしむる、又日光が其水蒸氣を通じて來ると、暖味を帯びた一種の色に變化するといふ意味なり■1油繪は獨習が出來ますか2西洋の畫家の傳記書がありますか、3東京美術學校洋畫科の入學試驗問題は如何なる者にや4美術學校の他に洋畫專門の學校ありや(SK生)◎1油繪は材料高價に取扱に勞多けれど、初學の獨習には水彩よりも容易なるべし2西洋畫家の傳記は丸善書店より日録を取つて調べられよ、澤山あつて今一々示し難ければ3『みづゑ』第九にある通り別に西洋畫科の試驗といふ者なく、豫科を終つて後各自其目的を定むるなり撰抜試驗は中學卒業程度なり、問題は今分らず4大平洋畫會研究所、自馬會研究所等あり■『みづゑ』十五の蓮池の描法は如何にせばよきや(十三夜の月)◎鉛筆にて輪廓をとり、日本の墨にて其上を形正しく描き、乾きて後、其輪廓内に一々繪具を塗り、多少濃淡を附けしなり。葉の縁にエメラルドクリーンにレモンエローを混ぜ、明るき葉にはレモンエローを多くす、赤味を帯びたる葉はエローオークル及バアントシーナを用ゐたリ、草の色、水の色はインヂゴーにブラオンピンク(ブラオンピンクを持たねばバァントシーナ及びガンボージを混じてよし)後ろの森や暗い處はインヂゴーの量を多くせしのみなり■布目エハガキ用紙の代價及發賣所を知りたし(佐野介)◎神田表神保町の文房堂にある布目ケント十教七錢との事■ペン畫に用ふる紙及ペンは如何なるものよろしきや(晩秀生)■紙は圖引ケントの如き光澤なくして滑なるもの、ペンは製圖ペンの上等品よろしからんインクは普通のにては用をなさずインヂァンインキ又は日本墨の濃きものを用ふべし■東京美術學校入學試瞼の問題を知りたし(乙部笑波)◎SK生への答の通り■1油繪を畫くに通常の水彩繪具にて畫きし上へ麻油かテレビン油を塗れは油繪の如くになるや2水彩畫は初めに蔭影を施すと最後に陰影を施すと何れやよきや3東京美術學校々友會月報の代價は何程(岸上清次郎)◎1仝く性質の異なるもの故かゝる事はせぬ方よからん2陰影を後に施すを普通とすれど例外あり水彩畫階梯五十頁を見られよ3非賣品