寄書 噫好畫題
靜遊
『みづゑ』第十八
明治39年11月3日
恍惚として五歩十歩、漸く我にかへつて、
まゝよ、今忍ぶ屈辱は後大を爲す基だ、
名譽も性命も擲つて迄報ひむと思ひし恨も、天然の好景に、湧き出づる繪心の爲め、今や消滅し盡して陶然と醉へるが如くである、顧れば里の炊煙は麓を横に靆き、紅葉せる頂には淡き月が殘つてゐる。
靜遊
『みづゑ』第十八
明治39年11月3日
恍惚として五歩十歩、漸く我にかへつて、
まゝよ、今忍ぶ屈辱は後大を爲す基だ、
名譽も性命も擲つて迄報ひむと思ひし恨も、天然の好景に、湧き出づる繪心の爲め、今や消滅し盡して陶然と醉へるが如くである、顧れば里の炊煙は麓を横に靆き、紅葉せる頂には淡き月が殘つてゐる。