寄書 水彩畫修業より得たる利益

山脇化龍
『みづゑ』第十八
明治39年11月3日

 水彩畫階梯に「意を密にして筆を粗にせよ」といふ語があります、私は畫をかく毎に常にこの語を口ずさんでをりますが、非常に面白い語だと思うて、今は繪畫以外、處世修養の上にも適用してをります。細かい所までよく氣を配つてしかも大局を看取するといふのがこの語の眞意でせう。眼前の小利益、小愉快に目がくらんで永遠切策をたてることを忘れたり、讀書するにしても、部分々々に力を入れて、其主旨とするところを知らずにゐる等は、この箴に背いてをります。

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