奇抜と失敗(承前)


『みづゑ』第十八
明治39年11月3日

□左の手は腰のあたりで帶を掴み右の手は三本の指で筆の先を持つて、二本の指を四十五度に開き、グツト反り身になつて畫面に向ふのは晩雪君である□同君の熱心は有名なもので、日中河原で傘を翳しながら寫生してゐたが、太陽は疾くの昔に地平線下へ入つて仕舞つても、矢張左の手に傘を持つたまゝ一切夢中□晴帆君の傘立てこそ奇抜なものだ、先づ鍬の抦に傘を結びつけ、地上に置て、鍬の先には大きな石を載せたものだ、傾斜の工合も丁度よいし、是では一寸した風にも恐れない、實用新案の登録でもしたらよからう□僕の處へは毎晩猫が這入つて來る畜生々々(完)

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