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大藤榮一
『みづゑ』第十八
明治39年11月3日

 拜啓、私の學校(京都府立第二中學校)に今度水彩畫の會が起りました。會名は彩美會と申し、會員は約三十名許、三、四、五の各年級に一人の委員があつて萬事世話燒をします、監督には圖畫教師の鈴川信一先生と、得田耕先生の御兩人で、毎月一回の寫生會と展覽會とを開き、展覽會にては會員の互選法で等級を定め、監督先生の御批評を願つて居ります。第一回展覽會は、去る十日より三日間校内の倶樂部で開催しましたが、折も折とて、當地岡崎に關西美術會の洋畫展覽會が開かれ、人の氣が繪畫に傾いて居た時でありました故、彩美會の人氣は校内に溢れて非常の盛會でありました。今、秋の半、滿目粛條の冬枯は近くなつたのに、茲藝苑に春風が渡つて、小さい若芽が萌え出しました、熱心と希望とは輝いて居ります、あゝ此若葉栴檀でせうか雜草でせうか、

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