繪ハガキ競技會記事(第二十九回)
『みづゑ』第十九 P.17
明治39年12月3日
秋の夜(意匠)小春(技術)
一等さが野鈴木錠吉田舎の町相田寅彦
二等電燈赤城泰舒稻小屋高橋松治
三等足柄山若松謙次郎暖日立花甚之助
四等想夫戀田上勉輔小山佐々太眞太郎
五等甲砧筒井角太郎郊外赤城泰舒
五等乙讀書田中楓子水邊榎本滋
六等雁の音佐々木眞太郎小春日和森榮一
七等故郷の便り藤田紫舟野道工藤太郎
八等野路の月松浦政次郎小川のほとり山田汀生
九等天の川森榮一村はづれ鈴木登
十等秋の月相田寅彦麥畑海老原研二
十一等田舎の月赤壁徳彦菊藤田紫舟
十二等獵の歸り高橋松治桂川宮澤汀煙
十三等龍田州加毛精一渡頭久保田榮作
十四等風船かつら中尾春雄山里高橋直子
十五等月夜の柿池田眞人郊外若林某
十六等秋まりり榎本滋山里小林誠之助
十七等月に薄吉川晴帆野邊加毛精一
十八等月夜大峯寂陽小春日小林克己
十九等石山寺宮嶋文雄田舎道筒井角大郎
(以下略)
十月二十八日開會四十二人百七十二枚選評の結果上記の如し
意匠の一等は設色穏やかにして、單に色のみにても秋の夜を思はしむ、二等は圖の組合せよく、三等の笙を位置に注意し。形を大にせば一層よかりしならん、四等駒の爪形昔のものならぬは借むべし、五等描法奇抜なり、技術小春は、多くは着色寒くして暖日の感なし、一等はよく趣を得しも、忠實なる寫生にあらず、他は取出でゝ言ふべきものなし。
立花、工藤、久保田の諸氏は、同一筆法にして、其色も殆ど似通へり、希くは他人の眞似を爲合ふ事なく、自然に向つて忠實に其色を研究し、各自の特色を出されん事を望む。
十二月課題
意匠歳晩
技術枯野
十二月二十日〆切全二十三日午後一一時より、日本橋區本石町十軒店ニ、門井學校内に開會。
但出品畫は春鳥會宛送られたし