■■■


『みづゑ』第十九 P.20
明治39年12月3日

□前號廣告に有之候通り、今回本會事業の一なる水彩畫講習所を擴張し、教室新築につき廣く寄附金を募集すべく議決致候
 □本年一月水彩畫講習所を開設するや他日教室其他の設備を完からしめんが爲め、各講師は其教授に要する費用迄も自辮して授業料の全部を蓄積致置候、然るに其資金や、未だ設備に要すべき額の十分二十分の一にも達せざるに早くも講習所新築の必要を生じ候
 □現在の校舎は、知人の紹介によって好意的賃借せるものにて、別に期限等の約束もなければ、事情によつては何時にても立退ざるべからず、且普通校舎の建物にて、光線の調節なく常に授業の上に尠なからぬ不便を感ずる事に御座候
 □前述の如く、教室の必要は日に逼り資金の準備は其額極めて小に、本會幹部の諸員、擧つて理財の才乏しく資金の全額を負擔する事難し依て不得止大方美術愛好の士女の同情を求むる次第に御座候
 □而して、應募規定の示す如く、名は寄附金の寡集なれど、其望める畫題に應じ苦心して製作せし水彩畫を金額拾圓につき一點の割を以て贈呈する筈なれば、應募者にとりては此機會を利用して、自己の好める水彩畫を得、永く樂むことを得べく、吾々に於ても、勞作によつて廣く趣味を頒ち、且資金を得て斯道の發展に盡し得べく、洵に相互の幸と信じ申候
 □讀者讀君希くは多大の同情を以て奮て賛加應募せられたく、猶知己交遊は勿論、苟も斯道に趣味を有する人士に樹對して盛んに勸誘せられ、爰に新に成らんとする講習所の設備をして遺憾なからしめん事を切望に耐えず候
 □新年號には、本號續稿のほか、丸山晩霞氏の御題『新年の松』に關する精緻なる意匠畫、并びに講話あり、大下藤次郎氏の『主觀的寫生及客観的寫生』の講話、及び『三宅克己氏の書翰』と題して同氏より大下氏に寄せられたる數百の書翰中より、有益にして趣味多きものを抄して逐號登載すべく、猶口繪には、大下氏の『檜原湖』を掲ぐる筈に候
 □大下氏著『水彩畫階梯』は、今回其第三版を發行する事と相成候に付、本會より版元内外出版協會に交渉し、趣味の普及を圖るため、外装を質素にし、定價を引下させる事に致候、猶同氏著『水彩畫の栞』は、第十五版限り絶版せしものなれど、市中には第二十版なるものを見受申候、右は著者に於て責任なきものゝ由に付左樣御含みあり度候
 自筆繪葉書交換希望者
 大阪西區北堀江裏通
 二丁目四番屋敷
 乙部笑波

この記事をPDFで見る