そのをりそのをり[二]

三宅克己ミヤケコッキ(1874-1954) 作者一覧へ

三宅克己
『みづゑ』第二十一 P.15
明治40年2月3日

(前略)
 春以來今日迄の研究の結果が直に繪にならずして終りし物中々に多く、申さば無駄の勉強のやうなれど、此爲め種々得たる處有之候、且又研究と申側より申さば、あながち繪を拵へねばならぬと限らぬ事をも深く悟り申候。一ヶ年一枚の善畫は百枚の駄作に優る事にて、一枚の成効したる繪を作らん爲めに、五枚十枚の「けし」は何でもなき事と存候。私も額縁の有る數だけ是非に畫を作らねばならぬなどの愚な考は、全く止める事と致候。(下略)
 三十三年七月小諸より
 

水彩畫講習所十二月例會一等赤城泰舒筆

 神は人の石を刻みし前より花を開かせ給へり。美術の極意は自然に摸するにあり、自然に化するにあり、自然となるにあり。自然のインスピーションを待ちて之を吾が手腕に運用するにあり。

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