寄書 自筆繪葉書[下]
凭美
『みづゑ』第二十二
明治40年3月3日
おやこれは珍らしい君何うして歸りましたと聞いたら、神經衰弱で暑中休暇のまゝ上京しません、畫などやつて居りや面白いでしようと云った。そうです神經衰弱の方になど一層面白いです、やつて御覽んなさいいゝ娯樂ですとすゝめたら、うまく行くか行かないかわからないがやつて見ませうつて別れた、それは去年の初秋の夕であつた。昨日僕の處へ東京から一枚の葉書が來た、それは彼れの自筆繪葉書で、君の御蔭で僕の病氣も非常によい、畫も熱心にやつて居ると書いてあつた。