肉筆繪畫交換に就て
二葉
『みづゑ』第二十四
明治40年5月3日
會員諸氏の親交をあたゝめ且つは互い技術發達を計らん爲め、左記の方法に依り會員諸氏の肉筆繪畫を交換せんとす、是非會員諸氏の賛成を祈る。
一、春鳥會より會員名薄の配付を願ふこと
二、各會員はスケツチブツク(大サ中形)の巻頭に、自己の住所姓名會員番號等を明記したるもの一部を第一番會員に發達すること
三、一番會員は該スケチブツクを受取たるときは、三日以内に揮毫して二番會員に向て發送し、是れと同時に其ブツク所有者には自作繪葉書を以て揮毫濟に付第二番會員に發送せりとの旨を通知せらるゝこと、(此の通知により己のスケツチブツクが今頃は如何なる君の手にあるか、又何、邊を辿りつゝあるかを知り、一は會員の惰慢にて永く留置せらるゝを防ぐ爲め)
四、二番會員は一番會員の如くし三番會員に轉送せらるゝこと、以下四五六番等順次廻送のこと
五、繪畫は寫生を尊ふこと勿論にして、水彩畫を主とし、油繪、セピヤ畫、チヨウク畫圖按等在野會員の參考となるべきものにして、畫題は隨意なるも、風景畫には其の場所、花鳥には其名稱等を記し、欄外又は適當の箇所へ、揮毫の年月日、筆者の住所姓名雅號等明記せらるべし(各會員揮毫は一頁か二頁位のこと)
六、右スケツチブツク轉送費は各會員お互の事なれば自辮にせらるゝ事、而して此ブツクは必ず丁寧に取扱、荷も損傷せざる樣注意せらるゝこと
七、此のブツク揮毫を了し、餘白なきときは直に巻頭の所有者に返送せらるゝこと
八、自己のスケツチブツクが、會員一同の訪問を終へ、大なる名誓を荷ふて歸着したるときは、其旨みづゑ誌上に廣告し會員諸氏の厚意を謝べし
右は小生の希望に候が、會員諸兄の御意見を求め此の目的を達し、會員組織の紀念と致し度候。