編者より
『みづゑ』第二十五 P.20
明治40年6月1日
◎小島氏へ珍らしき風景と拝見しました、見ないから分らぬが家の割合が大きくはありませんか、又山と前景と同一筆法はよろしからず◎田中氏へ鳥居の遠近法が間連つてゐます、背景の森は粗雜、濃淡の調子は極めて不充分、鉛筆畫を稽古されたい◎曉露君へ豆羽川はよい出來で冬の趣もよく見えます、横に直線が並び過た樣です、棹でも畫いたらよいでせう◎和賀井氏へ暖かなよい感じて、前の緑の色は結構です、家根の蔭の紫色を何とか工風されたい◎鶯枝君へ色も弱いし濃淡も不充分です、君は會員ですからちと寫生したものを御送りなさい◎千葉君へ注意深い描法ですが色が濁つてゐます、それに全體に紫色が多過ます