新渡戸稲造の言

なでしこ
『みづゑ』第二十六
明治40年7月3日

 新渡部稻造氏曰く、美術の美の字、是は羊の下に大といふ字が書いてある、支那人の思想といふものは恐らく大きな羊を願ふのであらう、日本では餘り見ないが、支那では羊を取つて食ふのであるから何でも大きい方がよい。美の思想とは一寸思はれない、それに反して、獨乙の美といふのは光、光明、若くは輝くといふ意から出てゐる、豚の目方が何斤あるといふのとは譯が違ふ。英でも佛でも皆前のやうな意義から出てゐる。光明といふ語から割出した、若くは思想から割出した美術と、羊の肉何貫目といふ所から割出したのとは現はし方が少し違ふのである。(なでしこ)
 

水彩畫研究所四月例會三等藤田紫舟筆

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