『みづゑ』第二十六
明治40年7月3日

 三保より見たる夏の富士、長濱より見たる朝の富士、田子の浦よりの風の日、三坂峠よりの黑き富士、精進湖よりの夕の富士、富十川よりの朝の富士等である、第一と第三最もよく他の四枚もそれぞれ面白い趣を見せてゐる、圖樣は何れも奇抜で、簡單ではあるが含蓄の多い色が使用されてある、伊上氏の木版の技術も頗る精巧を極めたもので、筆者の意を忠實に傳へたか如何か知らぬが、版畫として見ると實に結構なものである。此畫帖は、初學者の手本とするよりは寧ろ參考とすべきもので★間に掲げて愛翫すべきものである

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