問に答ふ


『みづゑ』第二十六
明治40年7月3日

■一ホースター及びカツサンの鉛筆臨畫帖の定價、二大阪に開かるゝ講習會の内容、三大阪すみれ會の所在(大阪AM生)◎一丸善書店に問合されたしカツサンは全部貳拾圓なり二廣告欄を見よ三知らず■一銀座の服部とは何處二丸山先生の水彩畫講義録一號以下は如何にせしや三會員は正賛共毎月必す作畫を出す義務ありや(群馬黒坊)◎一銀座四丁目角の時計及測量機店二書肆の都合ならん如何になりしやを知らず三繪は出來た時にてよろし■一投影畫と透視畫との區別二鉛筆畫の景色の手本にて初學に適するもの三水彩にて人物を畫くに其皮膚の色は如何(自然の兒)◎一投影畫法とは光線の位置によつて變ずる物體の影を正確に現はす法、透視畫法とは物體の位置及遠近によつて生ずる形を正確に示す法二日本橋通三丁目成美堂に小山氏の中等臨本あり三皮膚も場所によつて其色彩に大なる相違あり概して陽部にはロースマダー、クリムソンレーキ、エローオークルの類蔭影部には各種のブラオンの類を重とし婦人、には時にエメラルドグリーン等を混じ用ふ、實地寫生して研究すべし一雜誌LSは何號迄出しや二肉眼にて一本一本見ゆる枯木林の描法三淡き空に厚みを見するには如何にすべき四硝子へ日光の輝きて五光を差せし時の描法五大下先生の繪ハガキに後志羊蹄山の圖あり近年渡島せられしや六小樽に『みづゑ』愛讀者何人ありや七『みづゑ』増刊は何月か(登)◎一二號迄と覺ゆ二スケツチなれば其幹や枝を一の色と見て大要を寫せ、スタテーなら見ゆる通り研究して見よ三薄き色を幾度もかけて試み給へ四、コンナ處をわざわざ寫すに及ばぬ、強て描きたいなら繪が乾いてから小刀の尖で掻いたらよい五渡島せず友人のスケツチによつて畫けり六直接讀者は三四人あり七十月頃出すつもりなれど確定せず■原色版と石版と何れが高價なりや(日光、汀舟)◎現今にては原色版の方高價なり■イーゼルを用ひて寫生するに腕を充分伸すものにやかくすれば腕振へて困難なり未熟のためにや(KY生)◎寫す時は接近してもよけれで畫板の面が六十度の視角以外にある位ゐ顔は離れて畫かぬと全體の統一を欠く、手が動いて困るなら腕枕を用ゐるも可なり■一オーレオリン及サイプラスグリーンの販賣所二ワツトマン二つ切位ひの水貼をすると糊が剥れる如何にしてよきや(陸前KY生)◎オーレオリンは銀座の服部にあり乾製一個一圓二十錢サイプラスは文房堂にあり今は品切かも知れぬ二水を表裏へ充分含ませ糊が硬ければ如何に大なるものでも剥がれることなし、但大きな畫を粗末に畫くより小にして充分なるものを畫く方進歩のためにもよし■三色版と石版と何れが最も原畫に近きや(神戸MY生)◎現今の處にでは原色版の方勝れり、複雜なるものは到底石版にては出來ず、最も二三色刷のものは却て石版の方結果よし■小生目下中學の三年、將來美術學校に入らんとす、獨學にて如何なる事を修養してよろしきや(北海道S生)◎試驗準備としては木炭畫の研究必要なれど獨習困難ならん、平生暇ある時は鉛筆にて物の形を極めて忠實に正しく寫生すること、濃淡の調子を充分實物の如く見ゆるやうに寫生することを稽古して置き、入學試驗前數月間何處かの研究所にて木炭のデツサンをなせは安全なり、(木炭畫の素養なきものにて入學せし例もあれど)又水彩畫は單に娯樂としては兎に角、將來畫家たらん人には其前に墨繪の研究必要なれば、當分水彩畫は畫かぬ方却てよろしからん■地方講習生として大下先生の批評添削を受くることを得るや(松山M生)◎差支なし

この記事をPDFで見る