寫生旅行家のために
『みづゑ』第二十七 P.13
明治40年8月3日
△山や峠を登るには、息の切れぬを程度に極めて靜かに歩行すれば、何里の道でもどんな急な處でも苦しみなしに登れる
△その取返しに、平地や下り道は出來るだけ急ぐがよい
△氷砂糖を口に啣んでゆくと咽喉が乾かぬが、少し甘たるいのには閉口
△疲れを覺へぬためには、峠より下から何千歩で頂上へ登れるかと足數をかぞへると知らず知らず徃着く
△急坂には決して上を見ぬ事である
△草鞋は爪先二寸程水にぬらして穿くと丈夫である
△足の指の爪はキレーにとつて置くべし