羽前鶴岡町より
『みづゑ』第二十八
明治40年9月3日
▽「客月二十五日より古郷米澤地方に旅行いたし居候ひしが向ふに參りて得たる寫生は栗及榛の木等の緑葉のみにて莊内地方の明光に接し居りし小生が目には始めは唖然として筆採る氣にもなれず候ひしが遂に一樹の緑や破れたる茅屋さては茶椀のかけにも却つて深き美趣のあることを‥‥世何處とて畫とならざるものやある、アー吾が愚かさよと氣つきて漸く氣も進み筆も動きたる次第に御座候先生にも一度御都合よろしき時は是非當地方に一度は御來遊下されたく願上候海岸杯にも中々風光宜敷處有之候」云々(山宮允氏より)