寄書 とんだ繁昌

M、Y、生
『みづゑ』第二十八
明治40年9月3日

 寫生中澤山の人が集まつたが一向無頓着に熱心に輸廓をとつた、ヒヨイと後ろを向いて見たら二十人あまりも居る、其上に團子屋が荷を置いて見てゐながら商賣をしてゐる、餘りウルサイので其處はアト廻しと極めて、位置を變へて畫き初めたが、直ぐ又集まつて來る、團子屋先生も後からツイテ來たものと見え。チヤント商賣道具を并べてゐるコレでは何共シカタがないから、『何卒少し彼方へ往つてくれ』と頼んだ處、先生曰く『貴方の後についてゆくと大層繁昌しますので、先の處で四十二錢、此處では二十三錢』と、そして僕の寫生はゼロ。
 あゝ何とかよい工風はないものか知ら、諸君の御經驗を伺ひたい。

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