神秘録[二]


『みづゑ』第二十九 P.17
明治40年10月3日

□宿では鱒を澤山食はされた□それは嘸々辛くつて困つたろう□鱒の連中は決して山へ往かず川原へばかりゆく、何故かと聞て見たら咽喉が乾いてやりきれないとさ□下の方がいつでも飯を先に食へるさいふ利益がある□食事中はお櫃を叩く茶碗を叩く膳を叩く中々大騒ぎなものさ□土瓶がコロゲて茶が流れ出しても誰も構ふものがない□それは酷いね□そんなことを言ふが温泉はよかつたね

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