眞の健筆は自然の精細なる觀察より來る

ノースコート
『みづゑ』第三十
明治40年11月3日

 筆を達者に仕樣と云ふには、自然の細かい觀察と其感情を握るといふことが肝心である。世には贋せ健筆といふ奴がある。今でもよく覺えてゐるがサー、ジヨンユアと一緒にオピーの話をして居る時に「なぜオピーはあのやうに細部を略して仕舞のか」と聞たら「大方健筆を見せたい爲でせう」と答へた。するとジヨシユアが「ハー、唯だ顔の一方を白くし一方を黑くして、それで健筆なら健筆は容易な者だ」と云つた。(ノースコート氏畫談)

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