編者より


『みづゑ』第三十一
明治40年12月3日

◎海老名氏へ山の繪は忠實苦心の作なれども、空の描寫不親切なり、又畫面を同一の光りにて畫きし爲め散漫の跡あり、位置も極めて面白からず。水の圖は色彩單調なれど感じはよし、極手前の岸はモツト強く畫かねば繪に遠近見えず◎立花氏へ十和田湖の朝は、前景の水に映する船の影が硬い。秋景は調子が弱い◎小倉氏へ曙の感じ乏しく、漁舟は波の上に泛ぶといふよりも寧ろ波上に置てあるやうなり、雲の形も實際かは知らぬが面白からず。

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