ふみがら

大下藤次郎オオシタトウジロウ(1870-1911) 作者一覧へ

T、O、生
『みづゑ』第三十二
明治41年1月3日

 前略
 アメリカの多くの新聞紙は日曜日毎にポンチ繪の附録がつきますが、一番評判のよいのはニユーヨークアメリカンジヨイナルで、四頁大四色刷の世體人情を穿つた諷刺畫で、受持の畫家は四五人あるらしく、何れも達者なもので、一つの畫題同一の人物を二三年も續けて描いてゐますが、見る毎に思想が新しく思はずも拍案せしむるものがあります、それ等の續き繪は、その儘お伽芝居の狂言となり、特殊な顔や風體の人物は玩弄物屋にも並び菓子にもなつてゐて、グランパ(祖父)といふのは少年に大なる人氣があり、誰知らぬものもなき有樣です、隨つて畫家の給料も他の記者よりは數倍も多く貰って居ると申ます。曾てギブソンと申畫家が一婦人を描いたら、それが評判となつて一般婦人の髪形や服裝迄も其繪に做ふことゝなり、ギブソンスタイルといふて一時非常な流行を來したそうです。(三十六年二月)

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