竹に就て
河合新蔵カワイシンゾウ(1867-1936) 作者一覧へ
河合新藏
『みづゑ』第三十三
明治41年2月3日
余が竹に趣味を持つて來たのは研究を始めてからである、余が研究を始めたのは今より十數年前で、最初の二三年は思ふ如くに描けた、それより漸々無圖かしくなつて、この兩三年は途中で筆を捨てた事もあつた。研究を始めた二三年の意の如く描けたことを今更の樣に考へて見ると、その當時は形態と色とを寫生して居つたのであつた、それからのちは感じを描き現はす研究であつた、形と色とを描く實物寫生、之を學ぷにこれまでは樂で容易に進むことが出來るが、これ丈では畫にならぬ、感じを現はすといふのが畫の生命で、この生命ある畫を作るといふのは生涯の研究であるといふ事を悟つたのである(長野新聞)