寄書 余が淺き意見

中村利一
『みづゑ』第三十三 P.18
明治41年2月3日

 私は只今小學校に教鞭を執つて居るものですが小學校では水彩畫が教科書になつてありませんので大に閉口して居ります、否寧ろなげかはしいのです。
 水彩畫は小學校では教へ得られぬ六ヶ敷いものとしてあるのか又水彩畫は小學校では教へる必要のないものと思はれてあるのか、それとも當局者が水彩畫の味を知らないのか、どちらにしても不合點の至りだ。水彩畫も毛筆畫も同じ繪畫だ、然も同じ程度のものではないかと思ふ、今の小學校の教科書には始めから毛筆であるが、之も最初は鉛筆から始めて漸次毛筆又は水彩に進むようにするのが得た策ではあるまいか?水彩畫は小學校で教得へられぬ六ヶ敷いものでも不必要なものでもないと思ふ‥‥‥で予は敢て水彩畫界の諸彦に懇篤なる御批評を仰ぎ度い次第であるのです。

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