紹介
『みづゑ』第三十三 P.21
明治41年2月3日
◎漫畫天地小杉未醒著
京橋區木挽町四丁目佐久良書房
四六判美粧定價九十錢
未醒氏漫畫の妙は今更言ふも野暮なり、收むる處二百圖、皆一度世に出しものとはきけど幾度繰返し見ても飽く事を知らず、此種の筆は所謂天才に待つ處多く、常人のよく模做し能はざるものなれど、漫畫に趣味を有し毛筆線畫を學ばんとする人には最もよき參考書なるべし。瓊音、櫻巷、萍水、烏水、銀月、政女、紅蓮洞、思水、孤雁、嶺雲、獨歩、葉舟、うつぼ、等文壇名家の畫に題せる小品文皆大に誦すべし
◎方寸美術雜誌も多く世に出でゐるが方寸程商賣氣のない雜誌は他にはあるまい挿繪の選擇もよく版の樣式をいろいろ試みたのもよく記事にはまゝ樂屋落もあるが思ふことを直言して憚らぬ熊度は大に快よい殊に秋季展覽會號の阪本氏の固理窟は近來の好文字であつた
◎寫眞雜誌無名艸第一號
寫眞專門家の會合なる無名會の機關雜誌にして、美はしき畫五葉を挿めり、裝釘も印刷も用紙もコツたものにて、寫眞雜誌中の白眉といふべし(二十五錢、京橋區築地二丁目無名會本部發行)
◎美術評論第一號
繪畫鑑賞法の著者梅澤和軒氏の主宰する美術雜誌にして文藝方面にも及び趣味極めて饒なるは喜ふべし(毎月一回、一部七錢、芝區兼房町美術評論社發行)