淺井忠の水彩畫手引きより


『みづゑ』第三十五 P.14
明治41年4月3日

 淺井忠氏の水彩畫手引に曰く
 顔料は左の十四色があれば、之を調合して大抵の色が出來るから、あまり多くの種類は用ひない方がよい。
 白色イヤイニスホワイト。
 赤色クリムソンレーキ、ベルミリオン。
 茶褐色ライトレツド、バアンシンナ、セピア。
 黄色エルローオーカー、ガンボーヂ。
 緑色フーカスグリーン。
 青藍色オルトラマリン、インヂゴー、コバルト、プロシアンブルー。
 黒色アイボリーブラツク。
 以上
 又曰く
 繪の主眼たるものは形も明瞭に、色彩も豐富に、明暗も著しくかき、其他の部分は、これを引立たせるために、調子を柔げてかく、もし畫面全體が同一の調子で出來たならば其繪は雜然として、騒がしく不快なるものになつてしまうから、常に全體の調子に注意して部分を無意味に畫き過ぎて主眼を破さないやうにせねばならぬ。

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