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『みづゑ』第三十五
明治41年4月3日

□本號口繪日枝神社は、日本水彩畫會研究所別科卒業生田上勉輔氏の卒業製作にして原圖はワツトマン四ツ切大に御座候
□田上氏は職を遞信省に奉ぜられ、時には職務のために日曜日さへも役せらるゝことあるに拘はらす、去る三十九年一月、研究所がなほ水彩畫講習所といふて、神田三崎町の幼稚園内にありし頃より絶えず通學せられ、なほ夜間は、太平洋畫會或は白馬會の研究所に通ひ、寸陰を惜みて研究に餘念なき將來有望の青年に御座候
□この繪は毎日二三時宛を一週間以上もかゝりて寫生せられしものにして、繪畫として、多少の缺點なきにあらざれど、描寫親切にして、自然に對して極めて忠實なる體度は大に此繪の價値を増せしことゝ存候
□中繪は印刷の都合にて不結果に終り候、次號は特に注意致させ可申候
□丸山晩霞氏の小笠原島に於ける穫物は、繪に文に材料山の如く有之候。是等はいづれ整理の上、一部の書を編まるゝ筈に候が其内水彩畫に關係深き分をさいて、本誌臨時増刊として本月中旬發行致候豫定に御座候、
□隨て本號限り誌代前金切の御方は、其頃迄に御送金有之度候。なほ御送金は、振替貯金(登記料を加へ)に願ひ度、郵便爲替若くは切手封入等にては往々途中紛失のおそれ有之候。
□特別讀者は引續き二三の申込有之候につき、漸次本誌の内容を善美に致すべく侯。なほ六月號には精巧なる石版畫一葉を加へ可申筈に候
□特別讀者の制は、應募者にありては、毎月僅少の月賦拂込によつて一葉の額縁付水彩畫を得べく、編者はこれによつて雜誌に光彩を加へ得べく、一般讀者は同一代價を以てよりよき雜誌の配布を受くべく、實に一擧三得と可申候。希くは此際進んで御申込ありて、連月三葉の水彩畫を以て本誌を飾られんことを切望致候

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