娯樂の要件十個條
『みづゑ』第三十七 P.21
明治41年5月3日
衛生新報に娯樂の要件十個條として左の種類が舉けてある、そして其要件に各種の娯樂を一々配當して見ると、其適否の鑑別が容易に出來るといふてゐる。
第一娯樂は精神の慰安に適すべきもの
第二高尚にして優美なるもの
第三危險の恐れなきもの
第四衞生に適し且つ健康を増進するもの
第五多額の費用を要せざるもの
第六單獨にても樂しみ得るもの
第七衆人と共に樂しみ得るもの
第八實行簡易にして習得し易きもの
第九場所を選ます設備を要せざるもの
第十優柔に流れず風紀を害せざるもの
世の中に娯樂の種類は頗る多いが、右の條件に犠鰯しないものは繪畫と音樂位ひのものである、併し音樂は上手になつたら知らぬこと、稽古中は頗る他人に迷惑をかけるものだから、繪畫が一番よいのであるが、繪畫でも油繪ではアノテレピンの臭氣で他人を苦しめるから、結局は水彩畫が一番よく、以上の條件に適してゐるやうである。