問に答ふ


『みづゑ』第三十九
明治41年7月3日

■一鉛筆畫は重に形を研究するものにや二コンテー畫は何を研究するに便利なりや三木炭畫の長所四コンテーにて風景寫生は便利なりや五木炭畫の風景寫生の便否六花を寫す時彩料にない色が見えるかゝる時は他の色との配合によりて實物の如く見え得るものにや(EC生)◎一必ずしも形のみと限らず濃淡をも研究し得べし本誌所載のカツサン氏臨本を見よ二寫眞より描く肖像畫や模寫などに便利なり曾ては教育上多く用ひたれど今は殆ど用なし三木炭畫は一度畫きし處を消取るに都合よく總ての寫生に便利なり但戸外寫生には携帶に便ならず四不便なり五三の答への通り六經驗を積みて後は自在なるべし六大下先生畫、松聲堂發行熱海エハガキ錦浦海面及山の色の配合を問ふ(天野生)◎海はインジゴーに僅かのオレンジを加へ山はコバルト、インヂゴー、ヴアミリオン等を混ぜり、併し印刷上の功果は原色と同じからず■一分度器とは何なりや二畫板はポール紙にて可なりや、木は何がよきか(丸山生)◎一分度器とは半圓形に目の盛りたるもの文房店に賣れり實物を見たら使用法も解さるべし二厚きポールにても可、木なら朴が一番よし桐にても何にても輕くして反り返らぬものよし■一官費にて東京美術學校に入學し得るや二修業年限其他自費生と同じきや三其待遇及卒業後の義務如何四他に自費によらずして繪畫を學び得る處ありや(Z生)一、一、三圖畫師範科は多少の手當を給さるべし、委しくは同校より規則書を取寄せ見らるべし四なし■一昨秋文部省展覽會の石川氏作「森の路」の批評に圖樣は客觀、色彩は主觀とあり然らば加藤氏の「出町の冬」も同一の批評を下し得べしと思ふ如何二現今我國水彩畫大家の畫風はそれぞれ異なれどこれは各自の特色を發輝せしものにや、又は幾分歐洲の畫風の系統を有するにや三穗高山の麓の前景なる黄なる葉の蔭影は何を用ひられしや(小神野生)◎一「出町の冬」はよく記臆せず二初めは英國風佛國風といふ位ひの系統もありしならんが今は各一家の特色を現はし居るやうなり三インヂゴー、オーレオリン、バントミーナの類ならん今は記臆せず

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